BETTAKO -其の218-

神無月となり、水曜〜日曜日までの間で
商わせて頂く週のはじまりでもある。

今宵、豊洲の市場門は開かぬ休場の水曜日。
かれこれ19年の付き合いから食材達を
迎え入れた火曜日でもあった。

店に戻る昼の路地裏。
駅前周辺とは異なり、謙遜とした路地裏。
長月とは異なり、だいぶ背の身が
しっかりしてきた秋刀魚の鮮度は、市場で
目利き済。腹の身の厚さもだいぶ厚みに
覆われてきている。
秋刀魚の身は繊細で足も早い。
水曜日に用いる為、それ相応の仕事を入れる。
無論、これほどの鮮度良き秋刀魚は、
腸も手間をかれば、一種にもなる。

前回用いた鮟肝は今回も異なり、
その時、その肝に応じた仕事の入れで
変えてあげなくてはならない。

真鱈の白子や鮟肝は通常、醤油ポン酢で
出される事が多いが、ウチでは醤油ポン酢で
出す事はまずない。
その日の献立に合わせ、仕上げ方も変える。

料理法のひとつを、食材法のひとつに変える。
池袋時代にはできなかった事を、この路地裏で
出来ることの喜びは、計り知れない。

酒も肴は、人によって固定概念がある。
鮪の刺身は醤油。とはいえ、季節によって
獲れる場所にって、鮪の風味と食感は異なる。

もつ煮込みと筆で書するならば、豚もつや
牛もつなど、その食材が持つ旨味を活かした
仕上げ方がある。

古き時代、仕事を教わった恩師から
おかず→つまみ→御摘み→料理は同じ様で
実は相反したものでもある。と教えて頂いた。

他所の真似、それはきっかけでもよし。
他所には真似できないものを、持ち合わせれば
万人は気付かなくても、舌の利く客人は
その店の暖簾を潜られる。そう教わった…
古い時代の記憶は、日々、初心にも戻してくれる。

酒場BETTAKO

昭和56年創業。池袋東口で長きに渡り営み続けてきたBETTAKOは2017年12月に一度幕を下ろし、2018年2月JR板橋駅東口徒歩3分程、滝野川の路地裏で、本格焼酎・樽生ホッピー・数種の日本酒、日替り献立と共に静かに商わせて頂いております。尚、同じ屋号の酒場が御座いますが、当店とは無関係の酒場で御座います。店主敬具