それは4年前。
遠き薩摩の大地から噂は耳に入ってきていた。
今回記事にした内容は、鹿児島の実情。
長文となるゆえ、ご拝読苦痛に感じた方は、
スルーして頂くことを、お勧めいたします。
ANA3773便。
単独、鹿児島空港に両足を着けたのは、
14年ぶりであろう、11月9日土曜日の昼過ぎ。
14年前に立ち上げた、農家とのプロジェクト。
今回も、ポテカルゴがリズム良く歌声を
上げている。
それとは別に、もう一つの薩摩入りの理由が、
広大な土地にある。その一部を見せて頂いた。
店主これよ。と見せてもらった畝。
土は活きてるね。ほらコレよコレと畝から
掘り起こされた、さつま芋を見せてもらった。
ん?見たところ、普通のさつま芋だけど?
嗅いでみんなさい。
……………。
ん?シンナーのような匂いがするね。
この感染病が、大隅半島の岩川、輝北、鹿屋
薩摩半島では南さつま市、北薩の一部で報告が
あがってる。そう農家の父は言った。
どのくらいの割合で感染が広がってるの?
4割に満たないだろうけど、かなりのスピードで
感染が広がってるよ。
やはり…4年前から?
4年前ほど前、南薩摩からだね。
原因は?
今、現状検体を回して調べてもらってるけど、
種芋が原因じゃないかと。
品種は31号だけ? んー。まだわからんね。
原因究明の報告が上がらないと、何とも…。
損失は?
小さい農地で、18万円〜22万程の損失かな。
んー。岩川はまだいい方。
輝北や鹿屋は、被害が拡大しとるよ。
連れて行こうか?そう言われたので、
お願いします。と僕は応えた。
車に乗り込み、農地からどんどん離れていく。
山を下り、山を上り、更に車を走らせ
輝北の地で、一旦車を停めた。
ほら。ここも。あそこも。あっちも。
輝北の広大な大地に広がる、至る所の
さつま芋の畑。
しかし…車から降りた僕は、畑を見渡し
その惨状に目を凝らした。
これが…。
酷いもんだろ。ここはまだ被害は少ない。
農家の父はそう話してくれた。
さつま芋の畑。
その畑には花を咲かせていた。
さつま芋に花?
さつま芋の命に関わる病気を患った際、
夕顔の花を咲かせ、種を残す。
可愛らしい白と薄桃色の夕顔の花。
しかし、さつま芋の畑に花が咲くと、その畑は
生命の産声を上げることはできない。
それは13年前…北薩の出水地方の農地で、
教えてもらった。貴重な経験が蘇る。
花が咲いてるね。
でしょう。この畑はもうダメ。
マルチを剥いで畝を掘り起こせば、見た目は
綺麗な、生芋が現れる。
とはいえ、食用にも焼酎の原材料用にも
使用することのできないさつま芋達。
店主?どうして荒れ果てた畑を見たいと?
噂は4年前から届いてました。
ただ、実際この目で見て、触って嗅いでみないと
解らないことって多い。
焼酎の記事を仕立てる出版社のライターや
アホな酒屋や目先の飲食店は、有名焼酎だけに
フォーカスを当てがちである。
焼酎メーカーは、さつま芋を造る農家が無ければ
焼酎を造ることができない。
農家は、焼酎メーカーがいなければ、さつま芋を
提供することはできない。
Win Winな関係を、築きたいのなら、お互いが
真摯に向き合わなくては…。
そう僕は、農家の父に応えを返した。
店主は相変わらず。変わっとらんね。
そうですか?
しかし、これから大手はこれからどうするん
でしょうか?
K酒造は、この数年石高を下方修正しとるよ。
やっぱり。そうでしたか。
収穫された芋の7割強は、鹿児島のさつま芋を
用いて造る。農家の父が言うように、薩摩大地
両半島、4割ほどの農地が、この病にかかり
感染しているのなら、生産や収穫高にも必ず
影響がある。とはいえ、離島から生のさつま芋を
引くには、船便の価格が、単価に計上される。
収穫量が、これだけ減少したのなら、大手の
メーカーは、トップギアの量生産から、
ローギアにスピードを落とさなくてはならない。
万一、シンナーのような匂いを保つ、さつま芋を
用い、知った上で仕込むか、知らないで仕込むか
では、話は激変する。
それはまるで…。
2008年、日本列島に衝撃を
走らせた、食品偽装事件問題。
三笠フーズが、当時の農林水産省の幹部と
結託して、発がん性の高いカビが付着した
米を流通させていた問題。事故米事件を大隅の
大地に広がる畑を見ながら、記憶が蘇った。
焼酎メーカーに属する、製造責任者や杜氏は
さつま芋の出来栄えの良し悪しは分別がつく。
培養を遂げた新品種のさつま芋を用いて、
焼酎を造る際、出来上がりのイメージは、
造り手は分別がつく。
しかし、その芋達がどのような状況下で、
どう造られてきたのか、飲み方でどう岐路が
広がるかを知る造り手や、売り手営業社員は
少ない。
例え、このシンナー臭のさつま芋を、知った上で
仕込み、出来上がった作品の利益の為に偽装して
仕込んだとしたら、それこそ薩摩焼酎の未来、
そして焼酎を國酒として謳い続けるのなら、
焼酎は蒸溜酒であり、毎年味が異なるなどの
ハッタリかまして、商品説明を促し、製造、
そして販売を推移するのなら、真面目に造り
続ける、メーカーにまで、愛飲スルー人達の
怒りと哀しみの大波は必ず、至る所に到達する。
今回、何故?鹿児島へ?
どんなに東京で、洒落た形で焼酎を嗜めど、
現場には多くの、実情と景色がある。
蔵元はタレントでもなく、神様でもない。
蔵元オンリーラブな信仰心をいまだに抱き
続けている、酒ライターや焼酎スタイリスト、
飲食店は、蔵元が好きで仕方がない、地元の
情報が全く目に入らないのだろう。
ただ…今回、鹿児島において、全身で感じ
得たことは、一見何も変わってないようにも
見えるが、ペラっと一枚皮を剥いでみると、
荒れ果てる現実を、見取ることができた。
それは、さつま芋の畑だけではなく、焼酎大国
鹿児島本当の実情…。
どんなに綺麗事だけで、焼酎を囃し立て
飲む人達がこよなく焼酎を愛して止まないとしても
これから…どうしていくかは、欲望渦巻く酒業界。
売れるため、売るため、手段を選ばない、
表っ面は笑顔。裏っ面はドロドロとした、
貪欲な大人な世界、表と裏が広がっていること、
改めてこの身で、感じ得た事に、農家の一家、
そして、薩摩の大地に感謝は昔も今も、
BETTAKO 店主としては、何ら変わっていない。
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