妻の実家がある熊本県人吉市。
人吉駅から、くま川鉄道に揺られること
約43分、終点の湯前駅に着く。
国道43号と国道219号の交差点を歩く事7分。
創業明治27年、歴史ある蔵が国道沿いに
ひっそりと佇んでいる。
代表銘柄「豊永蔵」。
まだ若し頃に訪れた、僕の古いアルバムには
「酔って候」という銘柄が、ここ湯前町の
代表銘柄だった記憶が今も焼き付いている。
お米で造られたから米焼酎だが、時を遡れば
16世紀前半に球磨地方と薩摩の地で、
焼酎造りが始まった歴史がある。
国産米製焼酎は、熊本県でも球磨地方の
球磨という地名冠するブランドとして、
世界貿易機関(WTO)において、地理的表示の
産地指定を受け、世界的に球磨焼酎という
ブランドが保護されている。
現時点、全国における国産米を用いた米焼酎は、
米製蒸留酒の中でも、球磨地方の球磨焼酎は、
米製焼酎の本家本元と言えるだろう。
今回は一風変わった球磨焼酎にフォーカスを当て、
個人的な見解ではあるが、dancyuで一躍脚光を
個人的な見解ではあるが、dancyuで一躍脚光を
浴びた銘柄、豊永蔵を製造する蔵の、
ウイスキー酵母を用いた「ゆ乃鶴」という
銘柄をBETTAKOのラボで解析をしてみた。
※注:あくまで個人的主観。
瓶蓋を開け、生(ストレート)で味わってみた。
超にごりと書いてある肩帯。透き通る
透明瓶からも判る通り、濁りの色合いが、
ハッキリとわかる。
ほのかにウイスキー酵母の香りを拾えた。
濾過を抑えで詰められたひと瓶のこの銘柄は、
蒸留後の貯蔵味とコクが口の中で広がる。
その力強い味わいの中に、微かに見え隠れする、
白麹の風味。ハードに造られたこの銘柄は、
球磨地方で生産された焼酎は、お米本来の
旨味が瓶の中に凝縮されてることが多い。
しかし、この銘柄は厚膜に纏わられ、
球磨焼酎本来の焼酎としてではなく、あくまで
斬新な発想から生まれた銘柄としての
フィーチャなのだろう。
【ストレート時の分析結果】
Am:a-3.63(3.35mm)Kr:b++3.71(2.95mm) At:a+3.69(3.43mm)
熊本県は、縦長の地形。球磨地方には、
28社の蔵元達が球磨川の近くに点在している。
熊本県は古くから北は白岳。南は峰の露。
妻の実家のある県南の人吉では、
明治36年創業の織月酒造が造り成す
織月、舞織月、峰の露が好まれてきた。
さて…このウイスキー酵母と濾過を抑えた
この銘柄の旨味を引き出す、湯割りの術を
しばらくの間、時間を設け考えてみた。
水質の異なる水を3種類の用意。
パターンの違う工程を複数回試みてみた。
湯温と割り合は、これまた数ミリ単位で
調整しつつ、この銘柄が持つあらすじを
解いてみた。
お米の甘味。麹の特徴。酵母の引き立てを
ポイントにおいて、甘味と風味とのバランスが
崩れないように、慎重に水とゆ乃鶴を微調整、
重ねながらギリギリのラインを探ってゆく。
今回は、pHの値が最も高い水質の水を、
一種加えてみた。この手の数重なるプロセスが
含まれた銘柄の抽出は、水との相性が、銘柄の
バランスに大きく左右する。
【お湯割り時の分析結果】
K°1:Am:a+3.77=76.2s(4.43mm) Kr:a-4.36=53s(4.41mm)At:b-3.45=72s(4.51mm)
N:Am:a-4.66=63s(4.94mm)Kr:a-4.41=97s(4.62mm) At:b-3.71=113s(3.59mm)
O:Am:b+4.6=92s(4.0mm)Kr:b-5.23=84s(4.73mm) At:a-4.94=163s(5.1mm)
Best N+3.36×O1.64 60.5-63.5%=a+(4.95mm)
氷を用いてロックで試みた。
今回も厚みと材質の異なるグラスを2種類用意。
氷の面積は一定、氷の個数と解溶時間を考慮し、
ロックの深みを探る。
ロックの場合、銘柄のプラスとマイナスが
Fadeすることが多い。異なる銘柄ごとに、
溶解の際に生じるバランスの手のひら返しを
如何に見抜くかが、ロックを作る際の、
最大のポイントと言えると思う。
【ロック時の分析結果】
Thickness t1:Am:b-2.5k(118s=4.22mm) Kr:c++2.5k(131s=4.0mm) At:b++2.5k(141s=3.96mm)
Thickness t2:Am:b--3k(174s=3.99mm) Kr:b+3k(202s=4.41mm) At:b-+3k(189s=3.97mm)
Best Thickness t2 At:At:+3k(54%=189s,3.97mm)
次は水割りを試みた。
今回は湯割り同様に、異なる水質の水を
3種類用意。水割りの場合、全体的な
バランスを保つための必中のポイントがある。
それは銘柄の旨味を引き出す際、最も重要性の
高いポイントに目線を合わせ、銘柄が持つ
個性をどう安定に抽出するかである。
【水割り時の分析結果】
K°1:Am:b+m42.6%=(4.2mm) Kr:c++m48%=(4.0mm) At:b-m49.5%(4.63mm)
N:Am:a-m46.3%=(4.4mm) Kr:b-m49.5%=(4.6mm) At:b+m54.5%=(4.85mm)
O: Am:b+m53.5%=(4.50mm) Kr:c+m56.5%=(4.70mm) At:b+m49.5%=(4.45mm)
Best M2m56.5-60.5%=a+(4.67mm)
米製蒸留酒。つまり球磨焼酎の燗つけにおいて
最も重要なのは、お米本来の旨味と麹を、
如何に引き出すかであるが、ゆ乃鶴のような、
濾過を極限まで抑えた、且つ花酵母や独特な
酵母の場合、単に温めるだけでは、
蔵元が造りあげた銘柄のポテンシャルを、
最大限に発揮することはできない。
お燗にすると、湯割りや水割りで抽出する
事ができないFade部分は、明確に浮き出てくる
パターンが多い。
燗の解釈温度によって、用いた原材料、
原材料同士をブレンドはしていないか、
酵母や麹、水との相性が、適しているのか…。
つまりメーカーが造り上げた製品のメッキを
一度剥離するこのによって、瓶の中で眠る、
焼酎本来の見極めがBETTAKO流である。
今回の酒器は2種類、異なる水質は上記同様、
3種を使用し、割合・温度・タイミングを
見計らい、焼酎ブームで成り上がった蔵が
造り上げたウイスキー酵母を用いた、
このゆ乃鶴の性格とポテンシャルを、酒器で
拾い上げてみた。
【燗付け時の分析結果】
K°1:Am:b+m50.5%=(4.75mm) Kr:b-m48.4%=(4.50mm) At:b+-m58.5%(4.83mm)
N:Am:b++m60.5%=(4.77mm) Kr:c++m56.9%=(4.50mm) At:a+m67.5%=(5.25mm)
O:Am:a-m64.0%=(4.55mm) Kr:b+m52.5%=(4.95mm) At:a+m59.5%=(4.47mm)
Best O m52.5-60.45%=a-(5.05mm)
今回、ニュースタイルな球磨焼酎を独自に
考察を試みた。豊永酒造が造った豊永蔵は、
古きdancyuで脚光を浴び、同様に人吉の
武者返しや、水上村の大石、多良木の
球磨の泉など、球磨地方から離れた、
主要都市では、多少ながら人気はまだ残る。
しかし、地元の球磨地方でのニーズはまず無い。
何故ニーズがないのか、それは単純な事で、
球磨地方では米製焼酎は、白岳と織月と言った、
球磨焼酎二大ブランドが、地元では強社であり、
常圧蒸留の焼酎よりも、減圧蒸留で造られた
焼酎達が好まれ消費されることが多い。
それは妻の実家付近の飲み屋では、烏龍ハイや、
ライムサワーなど割りもの焼酎は、本州の
割もの焼酎ベースでもある、甲類焼酎ではなく、
球磨地方では、減圧蒸留の米焼酎を用いて
割りもの提供される事が多い。
東京・大阪・名古屋を筆頭に、乙類焼酎が
ブーム到来時代は、dancyuの力も借り、
球磨焼酎も飲まれていた。
しかし焼酎ブームが終焉と共に、全国に居る
ひと握りのファンだけが、球磨焼酎dancyu銘柄を
嗜んでいる事は多い。
とはいえ、今も昔も本州で球磨焼酎が
受け入れられない現状は、米焼酎呑むなら、
日本酒を飲む。という人が多いという事。
それは消費者のご最もな意見である一方、
米焼酎という狭いビジネスモデルの製品に対し、
製造メーカーは酒販に対して…。
酒販は飲食店に対して…。
education→教化, 育英
teaching→指南, 示教
training→育成, 養成, 教育, 実習
などのプログラムを怠った結果とも言える。
今回、このゆ乃鶴は、いろんな角度から
発見と驚きを体感する事ができた。
それは喜びの笑みではなく、複雑に重なり合う
製品品質の解析で生まれたプロブレムな笑みが
こぼれた銘柄だった。
温める、冷やすなどの両面で、さつまいも
本来の甘味を強調した芋焼酎や、香ばしさと
甘味を前面に置いた麦焼酎などや、オーク樽や
シェリー樽に貯蔵した米焼酎とは異なり、
斬新かつ新たな米焼酎もとい、球磨焼酎が
この銘柄の特徴であったと感受さることが
できた事、豊永酒造に感謝である。
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