JR志布志の駅から南に進路を取る。
448号線、時折広がる志布志の海原を、
眺めながら菱田川を超えると、その先に
ひとつの蒸溜場が佇んでいる。
120年の歴史ある蒸溜場は1901年創業の蔵は、
【老松】という名で私の中にしまわれている、
貴重な思い出として今も残っている。
【老松酒造】の120年の歴史は、2010年新たな
航路を進むべく、【天星酒造】となり今も
大崎町菱田の地でニッポンの蒸溜酒を醸している。
今回選出した銘柄は「呑酔楽」。
あくまで個人的な見解ではあるが、ふと…。
この2022年の呑酔楽を研究してみたくなり、
古いお付き合いをさせて頂いている、鹿児島の
小さい商店からこの銘柄を取り寄せて、
BETTAKOのlaboratoryで解析を試んでみた。
瓶蓋を開け、香りを嗅ぎ生で味わってみる。
幾つもの新酒がこの時間、産声を上げる中、
薩摩半島の風味とは異なり、その技術力が
中身に織り込まれている銘酒と印象を覚えた。
【ストレート時の分析結果】
Am:a+3.66(2.65mm) Kr:ba-3.72(2.84mm) At:a -3.45(3.0mm)
芋焼酎に限らず、瓶の中で眠る性格達を、
覆われ纏う衣を一枚一枚、丁寧に剥がしてゆけば、その土地に、そして個性という風味は、
瓶の中身の中でも、呼び起こす事ができる
酒類でもある。
さてと…この銘柄が持つ性格を引き出す方法を、
少しだけ思考と模索の時間を頂戴してみた。
6種類の水質異なる水を用意し、パターンの異なる
焦点を変えながら、その工程複数回試みた。
湯温と割り合は、数ミリ単位で調整しつつ
この銘柄が持つ、菱田の物語が含まれる、
将来のあらすじをひとつひとつ紐解いてゆく。
呑酔楽という銘柄を念頭に置き、造り手が施した
プログラムの中にある味、つまりこの銘柄の
ポテンシャルを微調整を重ねながら、ギリギリの
ラインを探索してゆく。
【お湯割り時の分析結果】
K1:Am:bb-3.64=21s(4.0mm) Kr:bc+4.12=38s(3.9mm) At:ba-3.86=44s(4.10mm)
K2:Am:a+3.86=58s(4.45mm) Kr:b+4.25=32s(3.96mm) At:b-3.66=46s(4.2mm)
N:Am:a+4.8=77s(4.54mm) Kr:a++3.92=113s(4.76mm) At:b-3.87=113s(3.99mm)
O:Am:b+4.6=92s(4.0mm) Kr:a+4.2=79s(4.5mm) At:a+4.21=152s(3.86mm)
Bo1K :Am:b+4.13=72s(3.56mm) Kr:b+3.34=64s(4.0mm) At:bc-4.13=134s(3.96mm)
B1o2K :Am:ab-4.6=67s(4.54mm) Kr:c++4.4=104s(4.2mm) At:bc+4.15=124s(4.60mm)
◾️Best bo1k134s(3.96mm=b+39.32)
ロックで試みた。
毎回同様、厚みと材質の異なるグラスを2種類
用意し、氷のキューブ面積は一定、氷の個数と
解溶時間を考慮し、ロックの深みを探る。
ロックの場合、その素材の甘味を引き出す方法は、
銘柄ごとに溶解の際に生じる回流がポイント。
【ロック時の分析結果】
ロックA:Am:b+k/1(113s=5.3mm) Kr:b-k/1(133s=3.9mm) At:b++(151s=4.43mm)
ロックB:Am:b+k/2=3(93s=4.45mm) Kr:b-k/2=3(125s=4.15mm) At:c++(131s=4.23mm)
◾️Best b-k/2=3(125s=4.15mm)
次は水割りで試みることにした。
この瓶の中で眠っている本来の性格を
呼び覚ます事、それは最も重要性が高い
事でもあり、ひとつのポイントでもある。
今回、水割りとして試みる5種の水を用いて、
深く探ってみようと思った。
【水割り時の分析結果】
K1:Am:b/a-m39.5%=(4.23mm) Kr:b/b+m46.5%=(4.3mm) At:a/c-m51.5%(4.73mm)
N:Am:a/a-m44.9%=(4.15mm) Kr:b/b-m51%=(4.4mm) At:b/a+m58.5%=(4.75mm)
O:Am:a/c-m61.4%=(4.34mm) Kr:bb-m55.6%=(4.24mm) At:a/b-m45%=(4.38mm)
K2:Am:b/c-m50.5%=(4.29mm) Kr:c/c+m60.5%=(4.77mm) At:a/c-m52.5%=(3.95mm)
M2:Am:a++m64.5%=(4.40mm) Kr:b/a+m55.0%=(4.60mm) At:a/c-m59.2%=(5.02mm)
◾️Best M2m62.5-63.7%=a+(4.60mm)
私にとって【燗】とは、単なる銘柄を温める
だけが燗ではなく、多くの銘柄達の個性には、
長所と短所がある。
短所が強めならば、長所とのバランスを
引き合わせながら、短所を長所へと誘う。
そのバランスを一瞬で見極めるの事こそが、
燗つけという見極めの技でもある。
今回の酒器は2種類、異なる水質を4種を使用し、
割合・温度・タイミングを見計らい、
菱田で生まれた、この【呑酔楽】の性格という
ポテンシャルをひとつひとつ拾い上げてみた。
【燗付け時の分析結果】
K1:Am:c/c+m51.5%=(4.72mm) Kr:b/c-m45.4%=(4.42mm) At:c/b+m55.5%(4.47mm)
N:Am:a/c-m44.5%=(4.65mm) Kr:b/b-m56.8%=(4.26mm) At:a+m60.5%=(5.05mm)
O:Am:a/b-m52.5%=(4.85mm) Kr:b/c-m55.8%=(5.45mm) At:b/a+m51.8%=(4.74mm)
M2/O:Am:a/c++m57.5%=(4.32mm) Kr:b/b+m.56.6%=(5.05mm) At:a/b-m60.6%=(5.86mm)
◾️Best M2/O m56.6%-67.5%=a+(5.45mm)
今回、BETTAKOの2階Spaceの空間内で、
久方ぶりに行うLaboratory fileの解析を行った。
新酒という分野は、製品それぞれの個性がある。
一年に一度の味。という表現を用いることも
出来るが、ある意味20年造ったとするならば
20回しか造れないという事にもなる。
今回、大崎町菱田の本格焼酎を分析したが、
菱田の素朴な風味の中に、新風を願うコンセプトが
この瓶の中に詰め込まれていた。
私は、美味いとも不味いという表現も用いる事は
ない。ただ用いる表現とするならば【面白い】、
【補う】という表現を用いる。
微かに眠る各々の性格をピンポイントに引き出す
それは容易くは無い。
ただ単に嗜むのも酒の魅力ではあるが、ここ数年の
本格焼酎達は、嗜む人がどう飲みたいか…という
自分なりのカスタマイズ製品としてプログラム
されているかのようにも思う。
美味い・不味いに翻弄されるのでは、いろんな
飲み方で、STYLEを楽しむのも酒としての魅力。
この【呑酔楽】を造り上げた、天星酒造株式会社
スタッフ一同に感謝致します。
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