BETTAKO -其の302-

谷口と主人-episode2-
目線は壇上に向けられてるのだが、
パネルディスカッションの会話が、
耳に入ってこなかった。

そりゃそうだよね。
御神火芋の成分を解析した数式と、
会場が用意してくれた、100度超えのお湯と、
お水…そして持ち込んだ3種類の水との、
適合性の数式を、頭の中の黒板に書き綴って
いたからだと思う。

少しだけ席を離れ、1階のエントランスで、
間違ってはいないのか、iPhoneのメモ帳アプリを
参照しながら、答え合わせをしている自分。
関係者が見ていたら、コイツ何やってんだ?
そう思うのも当然かもしれないね。
大凡の答え合わせを終えて、席に着くと、
早々と試飲会が始まる時間だった。

ぐっさんと最終の打ち合わせを手短に済ませた。
主人:提供側は僕に任せて下さい。
ぐっさんは、どんどん御神火をアピールして
下さいね。

谷口:カネちゃん、これちょっと飲んでみて?
そう手渡され飲んでみた。
谷口:どう?
主人:んー。
林檎が強調し過ぎてますね。
炭酸成分の値と、御神火芋の特徴の値が、
適合してませんが、流れのスタイルだと
思えばいんじゃないっすか?たぶん。
谷口:たぶんって…。
主人:さぁ始まりますよ。

扉が開くと同時に、会場内に居た人達が、
お目当てのブースへ向かっていた。

谷口酒造のブースとはいうと、試飲開始、
20分弱で、林檎のカクテルが既定杯数に
達した為、御神火芋を求める方達が、水割りと
お湯割りの注文に、ワクワクしながら作っていた。
その傍らで、ぐっさんは…多くの人達と
一生懸命会話を交わし、名刺を交換していた。
その光景を見れて、嬉しさが込み上がってくる。

とはいえ…。
谷口酒造のブースに多くの人達が訪れてくれた。
お湯割りや水割りの仕立てた味わいの変化に、
質問を受けお応えをしてゆく。
主人:すみません。お湯の補充って大丈夫ですか?
そう、会場のスタッフ聞いてみた。

届いたお湯…。
先程は沸点を超えた温度帯だったお湯は、
今度は、舌感で50度弱…んー。参ったなぁ…。
即興でお湯の温度と、用意した水達を、
合わせてゆく。

すると…、
女性:お湯割り…を…。
主人:くっ…倉嶋さん、どうして居るんすか?
倉嶋さん:あははは…お湯割りを…。
主人:甘めにしますか?辛めにしますか?
倉嶋さん:辛めでお願いします。

すると、会場のスタッフさんから、
お湯割りの注文が入る。

多くの人達で賑わう会場内。
倉嶋さんに元気を分けて頂いた。
さぁ、求めるお客さん達の要望に、
どんどん応えてゆくよ!気合いを再び入れた。

そんな、御神火芋は、鹿児島県の芋焼酎に
用いる、さつま芋とは異なる品種というのと、
鹿児島とは異なる土壌が違うさつま芋をもとに、
仕込まれた今回の御神火芋。

紅系の特徴を考慮しつつ、御神火芋特有の
苦味やエグ味を馴染ませつつ、
炭酸が売り切れとなったブースで、
面白く仕立てさせてみた。
それは柑橘も何も使わずに、少し酸味を効かせ、
スルスルと飲み易い仕上げ方でもあった。
また、御神火芋用に、調合した水やお湯割り用の
お湯の調合など、今回ブースに立たせて頂いた事、
谷口さんに感謝であり、この東京島酒の
イベントへの参加へ打診して頂いた、
八丈興発の小宮山くんに、感謝の時間というのは、
あっという間に過ぎて行った。

18年ぶりにGI認定された事、それはそれは、
とてもめでたい事なんですよ。
とはいえ、これは始まりのキッカケであって、
これからが、本当の物語の構築でもあると、
ブースに立ちながら思いました。

島々で造られる島酒達は、その島によって、
味が異なります。
異なるという事は…、
製品化されたプログラムの焼酎を、
ハイレベルなポジションでコントロールしてゆく
人材がこの先必要だと思った。

ただ単に、飲んでもらうキッカケの為だけに
ソーダ割りやカクテル等の路線に突き進むのは、
一つのスタイル形式としてありかもしれません。

ただ…自分自身、全否定はしませんが、
リキュールや果汁を添加した本格焼酎って、
別に東京の島酒じゃなくてもよくね?と、
思ってしまった自分が会場内に居ました。
口にして飲まれた人が、美味しい…と思えば、
それでもいんじゃね?
という事を思った自分も居ました。

とはいえ…。
島々の異なる味わい、そして異なる文化や歴史、
それらを全てひっくるめて、
東京の島酒なんですよね。
東京でも焼酎造ってる事への認知。
そこから生まれる、購買へのつながりは、
手に取ってもらう。買ってもらう。飲んでもらう。

それは、最も消費者に近い職種は、
酒販店と飲食店で、ただ単にお店の棚に
飾り置きするのではなく、島々の異なる
テーマに見合った提供方法や、思考の変換など、
今回をキッカケに取り扱う酒販店や飲食店達は、
この先、東京島酒に対する、ビジョンや
コンセプトをしっかりと考えて、この先長い年月、
未来に繋げてゆく事への、島酒の位置付けを、
このGI指定で育んで欲しいと、思い願った
9月11日の会場でした。

酒場BETTAKO

昭和56年創業。池袋東口で長きに渡り営み続けてきたBETTAKOは2017年12月に一度幕を下ろし、2018年2月JR板橋駅東口徒歩3分程、滝野川の路地裏で、本格焼酎・樽生ホッピー・数種の日本酒、日替り献立と共に静かに商わせて頂いております。尚、同じ屋号の酒場が御座いますが、当店とは無関係の酒場で御座います。店主敬具